針と糸とやさしさと

私は夫にエデという名前をもらった。

とても綺麗な名前だと思うけれど、慣れないでいる。

パリのアパルトメントつまり高田馬場の賃貸住戸での暮らしは、物価高の影響を除けばかなり優雅なものである。

部屋は簡易な仕切で寝室と居間にわかれている。居間は割と広々としている。食卓とワークスペースを兼ねた簡素なテーブルセットと本棚があり、そしてメダカの水槽、クワガタのケージにモルモットのケージが隅に配置してある。

しばしば夫はガーベラなどの花を買ってくれるので飾って夫婦で楽しむが、ここ1週間は買いにいく時間がなかったので、部屋は少し淋しげだ。

今日は慣れない針仕事に精をだした。山を趣味にする夫の服が破れたため繕う必要があったのだ。生来の不器用な私はしばらく繕うのを延ばし延ばしにしていたが、やっと着手したのだ。

ラテックスとシール生地に苦戦しつつ繕った。中々に難しい。出来上がりはやはり思うようにいかなかった。

すまない気持ちで夫に繕った服を見せたら、目を輝かして言った。

「ありがとう!これで山に行けるよ!」

そして、時間をかけた針仕事を労ってくれた。

もらった名前と夫のやさしさが、今日を良い一日にしてくれた。